その開始から20年が経ち、当時のクルマであるローバー 100と現在のクルマであるホンダ フィット(欧州名ホンダ ジャズ)の比較動画がリリースされていました。
これを見て感じたこれまでの衝突安全性の進歩とこれから求められる安全性を、さらに20年後に思いを馳せつつ書いてみたいと思います。
まず、キャプチャ画像で確認してみます。
赤色(えんじ色)の方が1997年製のローバー100、黄色い方が2015年製ホンダフィットになります。
で、ぶつけてみた結果。。
もう明確に生存空間に差があるのが分かりますね。
ローバー100が車内空間まで押されたボディがめり込んでいるのに対し、ホンダフィットはほとんどエンジンルームで衝撃を止めて車内空間まで至っていません。
特にAピラー上のルーフの形状に変化があるかないかで、衝撃が生存空間にまで及んでいるかどうか分かりますね。
では、それぞれ見ていきましょう。
まず、ホンダフィットから。
衝突の衝撃を逃がしていることもそうですが、エアバッグが有効に機能していますよね。
乗員に見立てた人形の顔を見事に捉えています。
続いて、ローバー100。
これ見たら乗れませんね。。
衝突がもろに室内に伝わってしまい、車内空間がまるで死後世界への入り口と化しています(怖)
しかも、運転手用のエアバッグがまったく機能していなくて、運転手を捉えないで真上に開いちゃっていますし。
人形とは言え、ダッシュボードに顔面をもろに打ち付けるこの画、見るに堪えません。
これ、動画で見るともっとよく分かります。
とまあ、こんな感じでこの20年間で衝突安全性は飛躍的に伸びたようです。
2016 ETSC PIN レポートによれば、このユーロNCAPのおかげで78,000名以上もの尊い命が救われたとされています。
この数字自体に議論の余地はあっても、ユーロNCAPがあったことで消費者もより安全なクルマを選ぶようになり、自動車メーカーもより安全なクルマを作る必要が生じたことから、多数の命が救われたことに疑いを挟むほどの余地はないと思います。
そんなユーロNCAPで公表された車種は、630件を超えているとのことです。
ちなみに日本のJNCAPは平成11年からのようなので、元号が変わってちょっとしたら20周年を迎えるようになりますね。
さて。
これまでの時代は、乗員保護に安全性の重きを置いてきたように思われます。
確かに自動車事故で数が多いのは、車対車とか車対物でしょうから、順番で言えばそうなるのは当然の帰結なんでしょう。
これは自動ブレーキに代表される先進運転支援システムの進歩に照らしても、まず車対車や車対物のシチュエーションに対して有効な自動ブレーキ等が初期の段階で開発されたという点でも説明が付きます(技術的な問題もあると思いますが)。
その一方で、死亡事故になる確率が高いのは車対人の事故ですよね。
1t以上もある鉄の塊が時速●●km/hもの速度で突っ込んできたら、生き延びられる人はほとんどいないと思いますし、生き延びられたとて後遺障害を負う確率も亡くなるのと同じかそれ以上に多いものと思われます。
そう考えると、ぶつかっても歩行者等の保護性能が高い車や、そもそも歩行者にぶつからないような車が今後評価されていくことになると思います。
歩行者保護性能は既にユーロNCAP等で導入済みで大項目にさえも入っていますが、例えば歩行者用エアバッグの装着がより加点されたりとか、ともすればその装着が義務化されたりとか、そういった方向になっていくように思います。
さらに言えば、衝撃を検知すると柔らかくなる素材が開発されてボンネットに使われたりとかといったことも、そう遠くない未来(例えば今から20年後とか)に実現しているかもしれません。
また、歩行者等にぶつからないようなクルマというのも、今後ますます重要視されるでしょう。
これについては前方のカメラやレーダーが捉えられる範囲のみで作動する歩行者対応自動ブレーキが現在の主流ですが、前方のカメラやレーダーがとらえきれないような脇からの飛び出しを側方の小型カメラや小型ソナーが捉えられるようになったり、IoTで繋がっている歩行者(スマートフォン)とクルマの位置関係とそれぞれの方向・加速度等から衝突の危険があったら回避行動できるようにしたり、様々な「ぶつからない技術」が開発されていくと思います。
おそらく20年後には、またユーロNCAPがアニバーサリー動画を公開していると思いますが。
それには今日の対歩行者安全性能の貧弱っぷりを示しつつ、その進化度合いを誇示することでしょう。
さらに言えば、これまでの20年間よりもこれからの20年間の方が、はるかに速くダイナミックな進化を遂げるんじゃないかなとも考えています。
また、未知の素材や新たな技術の開発によって、現在では実現不可能と思われることも未来では当たり前になっているかも知れませんね。
そう、20年前のほとんどの人が、クルマがここまで進化し、安全になり、さらなる伸びしろをも秘めていることを想像できなかったように。
んでは!