2021-07-03

本当にCクラス (W205/C205) のエアサスは故障しやすいのか? ~W206/S206でエアマチックがなくなったため調べてみた~

というわけで、どうでもいいことを深掘りしたい今日この頃なわけですが。
先日デビューした新型Cクラス(W206/S206)では採用されなくなってしまったエアサス(エアマチック)、個人的にも「雰囲気」で避けていたわけですが、本当に故障しやすいのか、ちょっと真面目に考えてみたくなりました。

メルセデスベンツのエアサス(エアマチック)でよく言われるのは、以下のことですよね。
  • とにかく壊れやすい
  • もって5年程度(5年目以降は故障続出)
  • 修理に数十万円かかる

私もこれらを真に受けているほどではないまでも、なんとなく流され、乗り換えるならC180かな~(趣味嗜好的にAMGラインを選ぶ率が高いので)って思っていたわけですが。

ふと、そんなんでいいのか?と自問し。
というのも、やはりこの手のことは「雰囲気」ではなくきちんと『数字』で把握すべきかなと、どうでもいいことを深掘りしたい性格の私は考えるわけで。

ある程度年数も経ってきたし(それこそ5年超えているのも多々あるし)、そこそこデータもありそうだなってことで、軽くまとめてみました。


まず、故障情報を収集する先(ソース)と検索方法です。
  • 国交省の不具合情報サイト・・・車名:メルセデスベンツ、受付日:2014年以降、装置名:緩衝装置・電気装置・電動機・その他 ※コンプレッサー等もあるので電気なども広めにチェックを入れました。
  • みんカラ・・・Cクラス・Cクラスセダンの整備手帳で「エアサス 故障」とキーワード検索。 ※それ以外のキーワードは該当なしでした。
  • 価格コム・・・Cクラス・Cクラスセダンの口コミで「エアサス 故障」とキーワード検索。Cクラス・Cクラスセダンのレビューで「故障」をページ検索 (Ctrl+F) で見つけて確認。 ※それ以外のキーワードは該当なしでした。
  • グーネットピット・・・「Cクラス 故障 エアサス」「Cクラス 故障 エアマチック」とキーワード検索。 ※それ以外のキーワードは該当なしでした。

結果は以下の通りです。

以上より、インターネット上で確認できたエアサス(エアマチック)の故障は、計9件であることが分かりました。
もしかしたら、この中にはダブっているものもあるかもしれませんが、大は小を兼ねる理論で重複は除かないことにします。

インターネット上に顕在する絶対数はこれで分かったので、続いては確率に行ってみたいと思います。


確率を求めるには、エアサス(エアマチック)搭載車について「故障した台数÷総販売台数」を計算すれば出ますので、まずは分母となる総販売台数を求めてみます。

まず、Cクラス全体の販売台数を求めます。
外国メーカー車モデル別新車登録台数順位の推移:年度 2006年度~2020年度」より、2014~2020年度の累計販売台数は111,714台であることが分かりました。
ただこれはCクラス全体であり、クーペやカブリオレもあればメカサス(バネサス)のものも含まれています。

そこで、カーセンサーの掲載台数の割合を販売台数の構成比と仮定して、セダン・ワゴンのエアサス(エアマチック)搭載車を推計します。
先ほど調べたところ、セダンのエアサス(エアマチック)搭載車は全体の約35%、ワゴンは全体の約19%となりましたので、Cクラス全体の販売台数の内、計54%がエアサス(エアマチック)搭載車と推定されます。

というわけで、故障率の分母となるエアサス(エアマチック)搭載車の総販売台数は、約6万台(111,714台×54%)と推定できました。


ここで確率の計算をしたいところですが、分子となる故障件数は「全体の故障件数」であるべきであり、先ほどのインターネットで確認できた件数では足りません。
つまり、インターネットで確認できた顕在している件数だけでなく、その裏にある潜在的な件数も見積る必要があります。

考え方としては、『Cクラス(セダン・ワゴン)に乗っている人のどれくらいの割合の人がインターネットの書き込みを行うか(或いは業者さんの書き込みを許可するか)』ということになるかと。
ここでもついつい雰囲気で適当な割合を持ってきたくなりますが、そこはもう少し頑張って推測します。

ここでは、対象車種(W205とS205)における「みんカラ登録数÷対象販売台数」で、車に関してインターネットに書き込む人の割合を求めたいと思います。
(本当はtwitterのAPIなども使うべきなんでしょうけど、クエリをうまく組めなくて断念。。)

というわけで、ざっとみんカラ登録数(≒愛車紹介の台数と見做す)を調べると、W205は1,158台、S205は919台、合計で約2100台あることが分かりました。
先ほどの2014~2020年度のCクラス全体の累計販売台数とカーセンサーの構成比率から、W205とS205の総数は約10.2万台と推定できますので、W205/S205を所有している方の内、2%(50台に1台の割合)の方がみんカラを使っていると推定されます。
もちろん、みんカラに登録しても全く書き込まない方もいますが、少なくともみんカラに登録している時点で車に関してインターネットを能動的に使う可能性が相応にあると考えられますので、仮定上はこれをイコールとして考えていいのかなと。

以上より、インターネット上に書き込まれていないものは、書き込まれているものの50倍程度あると考えられますので、故障台数は先ほどの9件を50倍する必要があります。
つまり、インターネット上で確認できない潜在的なものも含めると、450台程度がエアサス(エアマチック)の故障を経験していると推定できます。


ようやく材料が揃いましたので、確率を求めてみましょう。
おさらいですが、エアサス(エアマチック)搭載車について、以下のことが推定されました
  • 故障台数・・・450台
  • 販売台数・・・6万台

以上を計算すると、Cクラス (W205/C205) におけるエアサス(エアマチック)の故障率は0.75%と計算できます。

Cクラス (W205/C205) のエアサス(エアマチック)搭載車で、現在カーセンサーに掲載されているのは805台、故障率は0.75%なので、理論上は6台程度が外れくじということですね。

というわけで、思ったよりも全然少ないですね!
世の中が如何にデータドリブンではなく、雰囲気ドリブンなのかが分かりますw(それに流されていた私が言うのもなんですがww)


ちなみに、Cクラス (W205/C205) におけるエアサス(エアマチック)の故障はサスペンション本体ではなく、エアを送り込むコンプレッサーの不具合によるものがほとんどだそうです。
なんでも水没するとアウトらしいのですが、これがまた左前輪より前側にあるらしく。。
なので、経年劣化というよりも、なんらかのきっかけでコンプレッサー付近に水が大量に侵入してしまったり、関連する電気系統の不具合からなるってことが多いようですね。

なお、エアサス用コンプレッサーの交換費用は15~20万円くらいのようです。
安くはないのですが、まあそれくらいならまだ何とかなる範囲・・・と思う私の感覚はおかしいかな??


そんなわけで、本当にどうでもいいことを3時間ほどかけて深堀りしてしまった土曜日でした。
(こんなに時間かけるつもりはなかったのですが、やってみたら楽しかったというw)

ちなみに、上記の数字は全て2021/7/3 11:00時点に取得したデータを基にしております。
また、仮定・推定・推測を組み合わせているため、あくまで参考程度の精度である点にご留意ください。


んでは!





15 件のコメント :

  1. こんにちは!
    お久しぶりです(*^^*)
    こういう考察好きです。興味深く読ませてもらいました♪
    以下に世の中が印象で語られてるって感じですね。
    新型良いですが、結構高くなりましたね(^_^;)

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    1. お久しぶりです!コメントありがとうございます。
      いやほんと、雰囲気というか感覚というか印象というか、そういうのが蔓延っていますよね。まあ私も流されていた一人ではありますがw
      新型Cクラスどころか、最近のメルセデスの価格は爆上げ中ですよね。新技術をふんだんに取り入れてるとはいえ、ちょっと付いていけないです。。

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  2. フェルミ推定ですね。中古買う予定でエアサスの故障が多いときいて、S205のC200やめてC180にしようか、S204のC200にしようかなど悩んでましたが、エアサスはお悩みポイントじゃない気がしてきました。

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    1. コメントありがとうございます。
      おっしゃる通り、フェルミ推定ですね。本当はもっと統計学的なことも含めて求めたかったですが、私には無理でしたw
      S204もいいですよね。その頃のデザインも割と好きで、子ども達のピアノの先生が乗ってらっしゃるのですが、いつも眺めてはいいなぁって思ってます。

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  3. はじめまして。
    フェルミ推定での簡易分析、懐かしく思います。
    さて、私のW205 C200 AMGパッケージですが、7年目30000Kmで、「故障」表示が出まして、連絡してディーラーの手配したレッカー車で年末に運ばれて行きました。
    5年の保証期間内に高価なエアサスは予防整備?で新品に交換していたので、安心していたのですが、まさかのコンプレッサー故障とは・・・車検整備と重なり、只今入庫中です。
    屋根付き車庫で、走行距離も少なくて、大切にしていたのですが・・・。

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    1. はじめまして、コメントありがとうございます。
      フェルミ推定とはいっても、あくまで机上のことですので、空論とは言わないまでもすべてを把握はできていないかと。頂いたコメントが、その証拠ということになりますが。
      やはり故障するとしたら、エアサス本体というよりもコンプレッサーなんですね。調べた限り、そんなのばかりでしたし、位置的にもフロント左サイドということで、左側通行の道路勾配なんかを考えると水がかかりやすい状況ではありますし。記事内では経年劣化よりも・・・なんて書きましたが、徐々に湿気や少量の水を吸って劣化するとかもあるのかもですね。

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  4. はじめまして。
    W205の前期型に乗っているので、エアサス故障が気になってぐぐってこのPageにたどり着きました。
    業者による修理日誌とかいくつもみつかり、5年もったらいいほうとか、かなり不安を煽られますが、機械ものなので、所詮は壊れる運命と諦めて、ただ、壊れた時にいきなり走行不能で車庫から出せないとか、高速で立ち往生みたいなのは避けたいなと思っているところだったりします。
    壊れる壊れるという不安を煽る情報は多いのですが、実際にどのくらいの割合で起きるのか、前兆の有無とかを詳しく書いてあるところは少なく、気分ドリブンに流されそうです。

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    1. はじめまして、コメントありがとうございます。
      私の知る限りですが、コンプレッサーがショートしたり、エアサス本体が上がらないか空気がいかないことでコンプレッサーが過剰作動し続けてオーバーヒートしたり等、コンプレッサーに起因するものが多そうです。なので、残念ながら予兆というのは難しそうな気がします。。
      正確な数字が出ていない以上、このようにフェルミ推定せざるを得ないわけですが、故障率自体は世間で煽られているほど高くないように思っています。とは言え、ご心配の「急に壊れて立ち往生」リスクは付いて回りますが。。あまり安心材料にならず申し訳ございません。
      でもW205はいい車ですので、ぜひ楽しんで乗られてください。

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    2. お返事ありがとうございます。コンプレッサーの焼付きは、その前段階として、バルブブロックの動作不良やベローズからのリークがあって、常時稼働でオーバーヒートしてしまうようです。
      ただ、オーバーヒートに至る前に、長期駐車後に車高が下がるとか、コンプレッサーの作動音が長く続くなど、前兆の報告もなくはないようです。
      お金があれば、予防整備的にコンプレッサーとバルブブロックを新品に換えてしまうというのもありなんでしょうが、どうもその作業でベローズをやっちゃうケースもあるようで、悩ましいところではあります。
      とにかく、できる範囲でやれることはやって、注意深く乗っていきたいと思います。
      ありがとうございました。

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    3. 詳しいご解説ありがとうございました。勉強させて頂きましたm(_ _)m
      コンプレッサーからエアサス本体までの詳しい構造を存じませんが、お話しからすると故障リスクは複数箇所にわたっているということなのですね。また、予防保全的なことをするのも、ベローズ故障を誘発する可能性があるなど、なかなか面倒そうですね。。
      今のところW205/S205でメカサスに換装した例はなさそうですが、いずれ出てくるかもですね。構造変更が絡むので、保険やらリセールやら含めてハードルは色々と高そうですが。。
      よろしければ、またコメントください。今後ともよろしくお願い致します。

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    4. こちらこそ、よろしくお願いします。
      車種は異なりますが、欧州車関連の興味深い話題、楽しく拝見させていただきたいと思います。

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  5. ご無沙汰しております。この件?で本日リコールの案内の手紙が届きました。どうも昨年末にはリコールの報道があったようですが、気が付きませんでした。やはり、コンプレッサの減圧バルブ(バルブブロック?)の不具合で作動不良を起こすようです。慌ててぐぐったら、すでにいろいろ出ていて、対策部品不足でなかなか作業してもらえないとか。早速、ヤナセに問い合わせ(メール)する次第です。

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    1. こちらこそご無沙汰しておりました。そして、有益な情報提供、誠にありがとうございます。
      昨年末にあったらしいリコール報道、私も全くキャッチできておらず、お恥ずかしい限りです。でもそれは朗報ですね、少なくともリコール対象となって以降は、仮に不具合が出てもリコール対応で処理してもらえる可能性が高いですから。
      ただ対策品が、他の不具合やウィークポイントへの対策も含めて含めて本当に「対策」されているかが気になるところです。続報があれば、記事にしてみたいですね。
      ともあれ、新米W205乗り様のカーライフの安寧に少しでプラスになる情報であれば、こちらとしても嬉しいです!

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    2. お世話になっております。
      ヤナセに予約してリコールの改修を受けてきました。
      実作業時間は2,3時間らしいのですが、他の車の待ちとかで実質1日車を預けたので、実際にどのくらいかかったのかはわかりませんが、それほど大きな作業ではないような事を言っていました。
      作業自体は案内どおりコンプレッサー(フロントはモーターと言っていましたが)の交換だけだったようです。
      巷で話題だったバルブブロックは、リークもないので大丈夫ということで交換はされなかったようです。
      メーカーの見立てとしては、コンプレッサーで発生した錆がバルブの作動不良を起こして、それがエアサスの動作不良やコンプレッサーの焼付きまで至るという感じでした(そこまでは聞いてませんが、作業内容とその説明からの推測)。
      とりあえず、しばらくは様子を見ながら走らせてみて、大丈夫そうならメーカーの説明を信じて、とりあえずひとつ心配は減ったと思いたいと思います。
      おかげさまで、この1年、出るかもしれないけどそんなに頻度は高くなさそうという情報で、それほど怯えることなく乗り越えられました。ありがとうございました。
      また、何か状況に変化がありましたら(なにもないといいのですが)お知らせしたいと思います。

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    3. こちらこそいつもコメントありがとうございます。今回もまた大変丁寧に詳細をお知らせ頂き、大変勉強になりました。
      私もあれからリコール情報を調べたりしてみましたが、コンプレッサーの減圧バルブの材質が錆びやすいということで、コンプレッサーのみの交換のようですね。今回はドイツ本社からの報告であったこと、さらには販売開始から9年近く経ってからであったことから、色々と原因追及がなされた上での措置なのでしょうし、メーカーが言うコンプレッサーの錆がバルブブロックやベローズまで巻き込んで悪さをしていたということは、確かにそうかも知れないように思えました(W205のエアサスの構造に詳しくないのでぼんやりとした感じですが・・・)。
      私の拙い分析なぞで新米W205乗り様が少しでも安心してカーライフを過ごせたのならば、この記事を書いた者として望外の喜びです。今回のリコールでほぼ完治されてこのまま何も出ないことを私も祈っていますし、何もなくても気が向いたらまたコメントください^^

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