Pages


2019-08-18

あおり運転する車両の動画や情報のアップに潜む問題点 ~法的問題と一億総交通監視社会と~

常磐道の犯人、捕まりましたね。
しっかしまあ、試乗車とはいえBMWでやってくれるとは。。
ディーラーは車両の損失代金のみならず、しっかりと事件の対応で被った時間的損失や風評被害(逸失利益)を全額賠償請求するとともに、BMWジャパンもこの犯人にBMWの評判を貶めたことについての責任を追及してもらいたいものです。

さて、そんな煽り運転ですが。

ここ最近、よく目にする各種動画サイトやSNSへのアップ。
いわゆる「私刑」的なそれですが、問題はないのでしょうか。

また、煽り運転する車両の情報を集約するデータベース的なサイト(以下『あおり運転報告サイト』とします。)もあるようで。
なんでも、その車両のナンバーや発生日時、具体的な被害や状況などを一般ユーザーが投稿し、誰でも閲覧できるようなサイトとのこと。
これ、問題ないのでしょうか?

常磐道の犯人のような明らかに常軌を逸した生物は論外にしても、ここ最近見られる「私刑」的なそれらに、違和感を覚えます。


と、ここまで書いたところで。
弁護士事務所の所長さんが、まったく同じ論点で書かれていたものを見つけてしまいました。。


う~ん、、さすが弁護士先生。。
完璧すぎる解説です。

詳細はリンク先に譲りますが、あおり運転報告サイト等についての問題点をざっくりまとめると、
  • 肖像権・プライバシー権の侵害(憲法・民法)
  • 名誉棄損罪(刑法)
  • 偽計業務妨害罪(刑法)
ってところのようですね。

肖像権・プライバシー権は憲法上のものですが、それを被侵害利益とした不法行為(by 民法)に当たることから、民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。
名誉棄損罪や偽計業務妨害罪は、いずれも3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(名誉棄損罪のみ3年以下の禁錮もありますが)。

このように、動画サイトやSNSへのアップ、さらにはあおり運転報告サイトへの書き込みなどはかなり法的な問題が多いわけです。
さらに、あおり運転報告サイトの運営者さんも、その管理者責任を問われる可能性も高いようですね。
(そんなあおり運転報告サイトの最大手さんは、現在閲覧不可です。この問題に気付いて対策しているのか、アクセス殺到でサーバーがダウンしたかは知りませんが。)

ここまでは、法的な問題についてのお話し。

これもこれで問題ありありですが、それ以上に個人的に問題に感じる負の要素が、世の中が窮屈になること。

確かにあおり運転をする奴が一番悪いですし、やられた側は何とかして懲らしめてやりたいって気持ちもわからなくはないのですが。
でも、それがエスカレートするとどうなるでしょう。

たぶん、報復合戦みたいになりますよね。

下手すれば、わざと相手を挑発するような運転(例えば、追越せないシーンではわざとタラタラ走り、追越せる状況になったら速度を上げて追越しを妨害する等)をして、挑発に乗った後続車が煽ってきたところを都合よく切り取って投稿したりとか、そういうことになりかねません。
また、裏サイトなどでナンバーや運転手の顔写真なんかを晒されたりとか、自動車の保管場所を割られてしまうとか、そんなことにもなりかねませんよね。

それが正当な理由によってやられていても問題なのですが、この手のことが放っておかれると、どんどんどんどんエスカレートして、捏造なんかも始まりかねないわけです。

例えば、動画を編集して実際の距離感より近くであたかも煽っているように見せたり、実際には光っていないヘッドライトをパッシングしているようにエフェクトさせたり、その手のこともやろうと思えばできるわけで。
私刑における報復合戦では、このようなことまで惹起されかねないわけです。

で、この手のことって当事者だけで済まなくなりますよね。
少なくとも私は、そのような人間が世の中に一定数存在して、それが黙認状態で放置されていたら、気になりますし嫌だなと感じます。

だって、もしそうだとしたら、車での移動が窮屈でつまらなくなり、せっかくの楽しい旅行や外出に水を差してしまいますから。
ただでさえ車の運転って、気を遣うしリスキーなのに、こんな負の要素がさらに追加されたらたまったもんじゃないですよね。

これ、「一億総交通監視社会」みたいに思えてなりません。


SNSの台頭やスマートフォンの爆発的普及でほとんどの個人が発言権を持っ(てしまっ)た半面、それに伴うべき義務がいまいち伴っていないように感じます。
それは前段に記載した法的な知識に然り、後半の社会全体への影響に然り。

節度もそうなんですが、思慮分別が何事にも必要なことを、改めて考える必要がありますよね。


というわけで、適当なAuthorに似合わない独り言でした。

んでは!





0 件のコメント :

コメントを投稿